西向く侍

同じ課のGが左手をグーにして何やら呟いていた。
「何してんの?」
「5月が何日まであるか、数えてんの」
Gは拳の凸凹で、30日か31日かを数えていたのだった。
1月から順に凸が31日、凹が30日。2回ちょんちょんと凸凸を数える7月・8月が、子供の頃好きだったらしい。

「普通、月を数えるときは、『ニシムクサムライ』でしょ。」
「ええー?手だよー。ニシムクなんか名古屋だけじゃないの?」
「私、小学校は広島だけどニシムク派だよ。全国的にニシムクだってば。」
うちの会社の男性は関東人が多いため、何かと地元名古屋出身の女性陣と「地域対決」が起こる。
「僕も、ニシムクです。十一は武士の士に見えるからサムライなんです。」川崎のKKも参加した。
辺りに聞きまわったら全国的に俄然ニシムクサムライが優勢。
負け惜しみでGは言った。
「ニシムクサムライなんて、外人はできないじゃん。マイケルジャクソンは手だね、手。絶対。」
数えるマイケルを想像し、その後度々笑った。
でも、ドラえもんは数えられないよね。(独り言)