初恋のきた道

観た人がことごとくよかったと言うので、実はちょっと心配だったんだ。期待しすぎてガックリなんてこと、ないよな?と。

「初恋がきた道」・・・この邦題がよい。
スクリーンにあった原題は「我的父親母親」、英語では「The Road Home」
どれよりも「初恋がきた道」はイカしている。洒落ている。
家路は初恋の来た道。
一人で父が馬に乗ってやってきて、母が追いかけ、一緒に戻ってきた道。亡くなった相棒とまた一緒に家に帰る道だ。

若いディが草の海を駆ける。その姿に涙が出る。それだけでただ泣けるのだ。
何故そんなに泣けるのかと言うと、多分そのひたむきさ加減になのだろう。
肘を伸ばしたちょっと不恰好な走り方は、ディのひたむきさや一本気なところや純朴さを感じさせて、年老いた母になった今の姿にリンクしていた。
40年経った今も、母は昔のディのままなのだ。(・・・というのは、最後になってから解かった)
音楽も語りも静かで、だから余計ディの可愛さが活きていた。

ディの家の入り口には黄色い南瓜が積まれている。
同じチャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」の家には赤い唐辛子の束が掛かっていて、「紅夢」でも赤い灯りが印象的だったが、これは黄金色が眩しい。光の入り具合がとても綺麗だ。
とても好きな「秋菊の物語」が同じ監督の作品とは、このパンフで知った。中国映画を観るきっかけになった「菊豆」や「紅夢」も同じくチャン・イーモウ監督とわかって驚いた。

この三越映画劇場は、セカンド上映で配給に関係なく多分担当者の好みで選んでいるのだろう、とてもいい。
初恋のきた道」の次は、「グリーン・デスティニー
娘ディを演じるチャン・ツィイー主演の作で、また違った役どころらしい。