新・近松心中物語〜それは恋〜

演出 蜷川幸雄 脚本 秋元松代
音楽 宇崎竜童 歌 森山良子
衣装 辻村寿三郎
出演 阿部寛寺島しのぶ田辺誠一須藤理彩 他

20年間で1000回以上上演した「近松心中物語」を、演出や装置、衣装、キャストなど全て変更。
姑に頭が上がらない婿の与兵衛と女房お亀、遊女梅川と飛脚の養子忠兵衛の二組の心中を描く。
冥土の飛脚」をベースにしたストーリーだが、サイドストーリーが予想外の展開となり、しかも大笑いの場面もある。
前の作品は観た事がないので、どう変わったか分からないが、装置や演出がとても蜷川さんらしい舞台。
身毒丸にどこか似ていた。

情けない旦那の与兵衛と若いお亀の場面はどこか可笑しく、最後は笑いもあり面白い。
心中するはずが、与兵衛はお亀を刺した後、刀を川に落とし、身を投げようと川に飛び込む。
舞台には水を張った川が設えてあり、フンドシの田辺が本当にその川へざぶん。
ヅラが取れるかと思うほど一人水と戯れているのが、3階席からよく見えた。
あの田辺誠一がープリンスメロン様が。
観客は過半数が、御園座の客筋らしい年配者。きっとキャストらがどんな俳優か、知らないだろう。
心中ものらしからぬ、このまさかの展開は大ウケであった。

もう一組の方は正統派。
雪の降る中で赤い紐で首を締め、刀で腹を切り抱き合いながら冥土へというもの。
大量の紙吹雪積もる様子が、まさに雪がしんしんと降る積もるようで、舞台上にひとつの別世界の空気があった。

寺島しのぶ須藤理彩の両女優がファンタスティックよ。
須藤理彩の台詞はとても聞き易く、夫が頼りで甘えるが芯は強い若い妻を上手く演じていた。
寺島しのぶは演技云々より、醸し出す雰囲気がなにか違うと言うか、存在感がとてもある。
なんとなく、石田えり岸本加代子のような女優の印象。
出演映画が公開されるようで、それも観たくなった。

寿三郎の衣装は、色使いがとても効果的。
押さえたトーンの中で、遊女梅川の赤い襦袢が映える。
セットは、御簾を通した奥でも演じたり、その使い方も面白かった。
冒頭シーンやクライマックスは、身毒丸を思い出す。
そう言えば遊女の中に、身毒丸女相撲、金狼の女子社員の中島陽子さんを見つけた。この方、蜷川作品の常連なのだろうか?
あの大勢の中で、すぐに分かったぞ。

じっくり奥の奥の方も見たいし、衣装も見たい。
細かな部分も見たい。NHKで放送してくれないかなあ。