腕に覚えあり

正月に録っておいた、NHKにんげんドキュメントアンコール「かんな削り日本一・腕に覚えあり」を見た。ずっと見たかった番組だ。
昨年4月の放送を見逃し、なぜか再放送も流れ、もう見られないかと思っていた。

半年に一度、かんな削り日本一を目指し腕を競う「削ろう会」が岐阜県で開かれる。
木材をどこまで薄く削れるか。1000分の1ミリ(1ミクロン)を争う戦いだ。
薄く削るためには、木材のコンディションを見る目、湿度、かんな掛けの技術のほか、刃先をいかによく仕上げるか、研ぎと調整で勝負が決まる。
参加の大工は、前日に半日以上かけ、丹念に刃を研ぎ微調整を繰り返し仕上げたかんなを持参し、大会に臨んでいた。

先回の優勝者は「一位になるのも嬉しいし、一位になれない自分もいいと思っている。一位なら盗む技術はないけど、10位なら上位の技術が盗める。そういうことが職人として大事なんだ」と言う。
中には工法の変化で、昔ながらの木造建築の仕事ができず、プレハブ住宅の下請けをしている棟梁もいた。
かんな掛けをすることがなくなっても、腕を落とさないよう、ここに毎回参加しているのだという。
ピストルで釘打ちをする今も、後工程のクロス屋にばかにされないような丁寧で確かな仕事を下の者に指導する姿から、誇り高い職人気質が覗えた。
技術を伝えると言うことは、その文化と真髄を伝えると言うことで、このような大会が行なわれる意義はそこにあるように思った。