Reading 『椿姫』 with 草なぎ剛 /1

2002.6.22.23 びわ湖ホール(中ホール)にて
脚本・演出:土田英生
朗読:草なぎ剛 ソプラノ:野田浩子 ピアノ:高田浩

ヴェルディの歌劇「椿姫」に擬えたストーリーを、ホール清掃員と上司との”業務報告日誌”という形で、朗読。
ピアノとソプラノは、それにリンクした曲で、物語る。
つまり、朗読・ソプラノ・ピアノによるコラボが、この〔voice〕Reading『椿姫』だ。

2月のサントリーホールへ行ったHさんとMさんの勧めで、オペラと子デュマの「椿姫」で予習しておいた。
脚本はとてもよく出来ていて、そのストーリーは、本のマルグリットとアルマンの物語、歌劇のヴィオレッタとアルフレードの物語が、上手く椿と古田くんのエピソードにされている。

また、ソプラノやピアノの選曲も物語の一部として、上手く挿入される構成だ。
「ああ、そはかの人か」は、アルフレードヴィオレッタが恋に落ちた時の歌で、椿が古田との出会いをトイレに書いた時には、このアリアが歌われる。
ピアノも、朗読のバックではなく、その内容にあったシーンの曲を奏でて、朗読と同じくストーリーを伝えている。
椿が古田君との別れを決めた時、ピアノはアルフレードの父ジェルモンの手紙を演奏する。

そして、この「椿姫」は、清掃係・有谷(小間使いに当る)の視点で語ることで、オリジナルとは逆に、前向きで希望ある明日へと繋がっている。
最後はアリア「乾杯の歌」で、晴れやかに終末を迎える。
これは悲恋物語ではなく、明るいお話で、日々頑張ってる人への賛歌だ。

そんなところが、気に入った。
剛を意識して書いたという土田氏の描く有谷は、生きていて、成長していく。有谷と共に剛も変化する。
私が聴いた2日間3回の中でも、朗読は回を追う毎によくなっていった。
感情を込め過ぎることなく、それぞれの人となりも表現できている。

だから千秋楽では、最後のセリフ、「これからも、日々是精進します。」で、やられてしまった。
「日々是精進します。」と大きな声で言って深くお辞儀をした時、だーだー涙が出た。千秋楽のこれは、有谷の日誌でもあり、剛自身の言葉でもあったからだ。

(2 へ続く)